採用や施策の数より社内文化を重視 ラクス・技術広報が整えた「エンジニアが安心して発信できる環境」とは
「書けるネタがない」「どこまで公開できる?」現場の不安を解く
——情報発信を進めるうえでは、現場のエンジニアの協力が欠かせないと思います。ブログの執筆やイベントへの登壇をお願いする際、どのような課題がありましたか。
山本恭子氏(以下、山本) 大きく3つあると思います。1つ目は、情報発信に取り組むことが、自分の評価やキャリアにどうつながるのかわからないこと。2つ目は、社内情報をどこまで公開してよいのか基準が曖昧なこと。そして3つ目は、「顧客志向」という方針は理解できても、自分の仕事をどう発信に結び付ければよいのかわからないことです。
山本 恭子(やまもと やすこ)氏
株式会社ラクス 開発本部 開発管理部 技術広報課
システムエンジニアを経て、2021年 株式会社ラクスに中途入社。開発本部 技術広報課にて、前職で培った開発の知見を活かし、社内外向けコンテンツの企画・制作や技術イベントの運営をはじめ、開発組織のブランディング全般に従事。現在は主にアウターブランディングを担当。
特に公開範囲への不安を減らすため、社外発信のガイドラインを明文化しました。さらに、技術広報がレビューで確認する観点を言語化してAIに組み込み、エンジニアにも共有しています。双方が同じ基準でチェックできることで、安心して発信する土台ができました。
——AIによるチェックは、どのように活用しているのでしょうか。
川東 セキュリティと炎上リスクの観点は必ず確認します。たとえば技術ブログに利用しているライブラリの細かなバージョンを書くと、攻撃の手掛かりになる可能性があります。開発本部内にはセキュリティチームもあるので、こうしたリスクへの意識は高いですね。
高須賀 こうした観点に加えて、問題になり得る表現を抽象化してプロンプトにまとめ、エンジニア自身が公開前にAIでチェックできるようにしています。ただし、最終的な判断は人が行います。判断に迷ったときは、技術広報に気軽に相談してもらえるようにしています。
——情報発信への取り組みは、ITエンジニアの人事評価にもつながるのでしょうか。
川東 情報発信すること自体が評価項目になっているわけではありません。ただ、発信を通じて身についた力は日々の業務に活かされ、最終的には業務の中で評価されるようになります。管理職ともこの認識を揃え、メンバーの発信を後押ししてもらうようお願いしています。技術広報でも、社外発信に取り組んだ人を表彰する機会を設け、外部発信が賞賛される文化づくりをサポートしています。
高須賀 エンジニア本人にも、発信そのものがもたらすメリットを伝えています。1つは、自分の知識が整理され、理解が深まることです。もう1つは、知識を発信し合うエンジニアの輪に加わることで、社外から反応や新しい知見が返ってくることです。
——企画づくりでは、どう現場を巻き込んでいますか。
高須賀 企画づくりは、ネタ探しの段階からエンジニアにインタビューをして、いっしょに進めることが多いです。その際は、「最近は何に苦労しましたか」「どんな工夫をしましたか」と具体的に尋ねています。
「ブログに書けることはありませんか」という漠然とした聞き方では、新しい技術や目立つ成果を求められていると受け取られやすいからです。そうなると、「書けるネタがない」という答えで話が終わってしまいます。実際は、本人にとって当たり前のことでも、普段の仕事の話を掘り下げると、発信する価値のある事例がたくさん見つかります。
山本 もう1つ大切なのは、発信の目的に応じて関わり方を分けることです。エンジニアが自主的に発信したい場合は、自由や熱量を損なわないよう、主にセキュリティなどの最低限のレビューにとどめます。一方、技術広報から依頼する企画は、最初からいっしょにつくります。30分ほどヒアリングし、何を伝えたいのかを共有してから、具体的な取り組みを聞いて内容を詰めます。執筆から公開までは1ヵ月ほどかかることもあります。
修正をお願いするときも、ただ「直してください」とは言いません。もともと合意した目的に照らし、修正前と修正後を示して「こちらではどうでしょうか」と相談します。
高須賀 たとえば、エンジニアにお願いすることの多いブログの執筆では、ただ「書いてください」と依頼するだけでは、現場からは単に仕事を増やす存在だと思われかねません。そのため、お願いをする際にはブログを書く目的や、それが組織やお客様にもたらすメリットを説明し、共通認識をつくることを大切にしています。
——技術に詳しくない広報担当者の場合、エンジニアとの距離をどう縮めればよいでしょうか。
高須賀 距離を縮めるには、エンジニアの仕事や文化、常識、大切にしている考えを知ろうとする姿勢が欠かせません。私自身はエンジニアの経験がないので、まずは基礎知識を身につけるために応用情報技術者試験の勉強をして、合格しました。そのうえで、IT関連のニュースを読んだり勉強会に足を運んだりして、技術やトレンド、エンジニアの文化などを学んでいます。
川東 私たちも日頃から技術記事やニュースを読んでいますし、社内では技術発表を聞きながら交流する場も設けています。現場の近くにいて、普段から会話を重ねることが企画にも生きてきます。
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山田 優子(ヤマダ ユウコ)
神奈川出身。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、大阪に拠点を移しさまざまな業界・職種を経験してきたが、プロジェクトベースの働き方に魅力を感じて2018年にフリーライターに転向。現在はビジネス系取材記事制作を軸に活動しながら、チームで商品企画・開発にも挑戦中。
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井上奈美香(HRzine編集部)(イノウエ ナミカ)
1994年宮崎県生まれ。京都女子大学文学部国文学科を2017年に卒業し、株式会社翔泳社に新卒として入社。メディア事業部の広告課に配属される。2020年8月に人事向けWebメディア「HRzine」の立ち上げに参画し、HRzineの営業責任者に従事。2023年4月よりHRzine編集部に所属。
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川口 紘(カワグチ コウ)
1984年、東京生まれ。早稲田大学卒業後、2008年にGO-SEES入社。2010年にGO-SEES退社後、渡英。2011年、フリーのアシスタントを経て、帰国後に独立。現在はビューティ、ファッション、ポートレートを軸に活動中。主な取引先は講談社、阪急コミュニケーションズ、幻冬舎、フェリシモなど。
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